マネジメントと管理

 世の中には、様々な課題解決のためのプロジェクト活動や日々の各種業務が進められており、業務の進め方として管理とマネジメントがある。管理とは、何か対象物や管理値を制御することであり、英語ではControlである。一般的に、管理は対象物や管理値が管理上限と管理加減以下にならないように制御することである。例えば、図1の管理が示す様に、残業制限が40時間の時、各要員の残業時間が管理値以内になるように、管理課長は定時退社日にはオフィスの明かりを消して回ったりする。一方、マネジメントは到達目標を認識して、持てる資源を最大限に使用して、より早く、そしてより効率的に目標を達成を目指す。従って、マネジメントは目標を理解して、目標に至る最短道を進むことが必要である。例えば、図2に示す様に家から学校までの最短道を探すのと同じである。また、道の探し方はスタートから始めるボトムアップではなく、目標から始めるトップダウンの方が効率的である。そこで、マネージャには多くの経営資源を動かすこと、そして経営資源を効果的に動かすことが求められる。例えば、図1のマネジメントの、その他の経営資源として、信頼関係、取引関係、販売や購入ルート、馴染みの商社やネームバリューがある。そこで、優秀なマネージャになるには、動かせる経営資源を増やすことと動かし方を学ぶことが求められる。

軽視例えば、プロジェクト遂行に於ける目標達成を不安定にする要素はス

図1 管路とマネジメント
図2 最短道

購買行動は全方位価値比較

ビジネスでのコンペチターは同じフィールドにいるとは限りません。人は属性の異なるものを比較することができます。たとえば図1にあるように世界旅行と中古の軽自動車の価格が100万円程度で同じであるとすると、購入に当たっては比較することができます。人が属性の異なるものを比較できる理由は図1のレーダチャートにあるように人は旅行の楽しさ、記念度と車の利便性を比較できる能力をもつ事にあり、属性の異なるものを比較するの能力は車と旅行の価値順位を自由に入れ替えることのできる空間上に車と旅行が配置されていることにあります。


図1価値と利益

図2全方位価値評価

心理的価値評価によるパッケージデザイン

品質はスペック

 品質とは何か、品質とはある人には壊れないことであり、ある人には安いことであり、製造者と顧客の立場の違いにより異なる。そして、品質は必ずしもユーザの立場で考えられている訳ではない。一方、工場の品質とは製品が製作精度に入っていることであり、ばらつきがないことである。製品にばらつきがあると消費者が払う対価に対して製品の価値が保証されていないことになる。従って、工場における製品の品質とは、ばらつかないことであり、必ずしも消費者の使い勝手が良いものではない。通常、図1に示す様に製品はスペックを満たす範囲でコストダウンが図られる。コストダウンの代表的な考え方としてリーンプロダクションシステムがあり、主なコストダウン手法に安い材料や安い部品を使うこと、加工が簡単になるように設計すること、人件費の安い所で作るがある。そして、製品のばらつきを減らして製品の価値を保証しようとする手法が6σである。

図1 リーン生産方式

(1)リーン生産方式:lean product system

マサチューセッツ工科大学の国際自動車問題研究計画で指摘されている無駄のないスリムな生産方式で、具体的には,トヨタなど日本の自動車メーカで一般化している労働力、在庫、製品開発期間、工場スペースなど企業活動の中使用資源量、欠陥を減らす手法で、多様化する顧客ニーズに対応するシステムである。代表的な活動はムリムラムダの排除がある。

(2)6シグマ(シックスシグマ)

欠陥を減らすための品質管理手法であり、米国モートローラから始まった活動である。シックスシグマとは生産やビジネスにおけるエラーや欠陥を100万分の3~4の確率以内に抑えるシステム・プロセスを構築することを目的とした経営・品質管理手法のことである。

技術は再現性

 技術とは再現性のある手順のことで、一定の道具、一定の材料を使ってある目的を達成するための確立された手順のことです。技術は、より正確により早く、より効率的な手順へと進化します。一般的に日本では技術は個人のスキルであるのに対して、欧米ではマニュアル式の働き方に伴い、技術の改善はマニュアルに織り込まれます。たとえば欧米の製造方法はマニュアル主義であり、改善はより優れたマニュアルを作成することみなされます。具体例としては図1に示すCMMI(Capability Maturity Model Integration)能力成熟度モデル統合があります。CMMIは組織におけるソフトウェアプロセスの能力成熟度を示す参照モデルであり、カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所で開発されたソフトウェア開発に関するモデルです。組織の能力はレベル1~5で示され、各レベルで必要となるプロセスが規定されています。CMMIのレベル4では、定量的にパフォーマンスの測定を行い、プロセスを改善することが求められています。つまり良いマニュアル作りが改善となります。マニュアルの改定数をKPI(Key Performance Indicator)として、組織の改善活動を計ることができまう。また、欧米ではプロジェクトマネージメントやリスクマネジメント手法に見られるように人の能力に依存しないシステマティックな手法が利用されます。

図1 CMMI

ビジネスはシュミュレーション

 明日起こることを予測して準備することが、日々のシュミュレーションです。そこで、ビジネスに於いても顧客が何を要求するのか、取引には何か必要なのかを準備することが有効です。従って、ビジネスをシナリオに沿って、シュミュレーションすることにより、より早く経験を重ねることができます。

プロジェクトマネージャは作業余裕を読む

作業余裕の見込みは作業を計画通りに進めるポイントです。適切な余裕はプロジェクトを順調に進捗させるために必須です。プロジェクトの見積もり構成は図1の(A)に示す通り、各見積もり区分に余裕があります。そこで、見積もり中の余裕幅を読み、適切な余裕に最適化を行萎えるのが優秀なマネージャとなります。そして、見積もりに余裕を積む要因としてリスクがあり、一方隠れた余裕としてプラスのリスクがあり(リスクマネジメントの項目参照)、プラスとマイナスのリスクを読む能力も優秀なマネージャには必要です。

図1 見積もりの組み立て

スケジュール管理は完了日ではなく着手日管理

 スケジュール管理で監視するのが作業の作業完了日です。作業管理日が遅れると計画全体のスケジュールが遅れる可能性が高まります。作業管理日が遅れる原因の1つは業務の生産性です。作業の取りかかり時は生産性が低いにも拘わらず、計画時点では作業の生産性を最大で計画します。下の図に示す様に作業量の見積もりは日数×作業効率の正方形で計画されます。従って以下の絵にある様に作業開始時点での生産性の低さが、作業遅れとなって現れます。作業開始時に生産性が低いのは、作業開始に当たってスキルの獲得や情報収集が必要なことがあります。そして、作業開始時には作業の成果物生産には直接つながらない作業が必要なため、作業遅れが発生します。そこで、作業のスケジュール管理は完了日ではなく、着手日を管理することが考えられます。作業開始日の前に作業に着手しておいて、すこしずつ作業準備を進めることが、作業遅れ対策として有効です。

(関連事項 リーダシップ、作業余裕見積もり、参考資料

3秒ルールインテリジェンス

 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能です、3秒ルールを基本にしています。3秒ルールは人の意思決定と行動選択は3秒サイクルで行われているとするルールで、3秒ルールインテリジェンスでは人の意思決定は3秒間の価値感の揺らぎに従ってゆらいでいると定義しており、3秒サイクルをもとに人の脳で行われる意思決定を模擬します。人の大脳内には図1に示す様に神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされています1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされます。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われます。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられます。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされます2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作します6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間内に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられます7)8)。そこで、微小時間を3秒と考え、人は図2に示す様に3秒後までの行動候補をつないで行動しているとした、意思決定モデルが3秒ルールインテリジェンスです。

1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31

3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究

3秒ルールインテリジェンスによる意思決

課題解決力は情報収集力で計る

 課題とトラブルに直面した時にマネージャはまずA、そしてBを指示します。このAが情報収集です。例えば、あるシステム開発を行う場合には目標、性能目標値、操作人員数、トランザクション数を調査します。この調査内容をフォームにしておけば、だれでも、まずAができます。そして、まずAで重要なことは考えずに動けることです。また、まずAでヒアリングを行う場合にも質問事項を決めておくことが有効です。例えば、医療では問診用紙に基本的な質問事項が書いてあり、問診は問診プロトコルに従って進められます。プロトコルは通信手順のことで情報の送受信に於けるやりとり手順のことです。

マネージャのスキルは使えるリソース数で計る

マネージャでも制約条件下にあるのが、プロジェクトマネージャです。そして、プロジェクトにおいて、進捗が芳しくない場合の打ち手としてプロジェクトマネージャの交代があります。プロジェクトマネージャの交代に期待することは、交代したプロジェクトマネージャが持つリソースとリソースの使い方により、現状の状況を打開することです。プロジェクトマネージャが持つリソースとは経営リソースと同じ人、お金、ものに加えて、経験情報、情報源、信用、取引関係があります。情報源とは直面している課題を理解して、打開情報が得られる人や組織のことです。従って、使えるリソースが多いプロジェクトマネージャが優秀なプロジェクトマネージャとなり、プロジェクトマネージャの能力は使えるリソースの数を数えることにより、測定することができます。使えるリソースの数を数えることにより、プロジェクトマネージャに限らず、一般的なマネージャの能力を測定することができます。しかし、実際には使えるリソースの数ばかりではなく、リソースの使い方も重要で、リソースの使い方が豊富なマネージャは課題解決手法を多く持つことになり、リソースの使い方は経験により獲得されます。